洗面所での思い出

中学生にもなって、ハハオヤが毎朝私の引っ詰め髪をグイグイ引っ張ってまとめていた。なんでも支配しないと気が済まないハハオヤ。いつも痛かった。

自分でやっておいて、或る日突然、

あんた達はなんでもお母さんにやらせる、とヒステリーを起こす。

自分でやりたいなんていったら、

「お母さんにやってもらうのが嫌だっていうの!」って怒り出すから

ハハオヤには何一つ意見も提案もしなかった。

「痛いよ」の一言も言えなかった。

理由は「お母さんにやってもらうのが嫌だっていうの!」って怒り出すから。

そして一度ハハオヤの機嫌を損ねるとそのとばっちりをYやTも食うから。

 

ハハオヤから私への身体的暴力がぱたっと止んだのが中二の時だった。

顔面を引っ叩かれて、右の耳だけ切り取ったみたいに真紫色になった時、自分では痛みさえ感じていなかったけど耳の色を見て「ああ、強く打たれたんだな」と後で思った。それで朝になって鏡の前に立たされて髪をぐいぐいブラシで引っ張られてる時に、ハハオヤが「アレッ」て言った。私の耳の変色に、自分でやったことのエゲツなさに気づいたんだろうか。良心の呵責が無いハハオヤだったけど、流石にまずい、って思ったんだろうか、この頃からぱったりと私への暴力は止んだ。

 

それともう一つ洗面所での光景で忘れられないことがある。その時私達3人がそこにいたんだけど、出し抜けに

「どうしてお母さん、あんた達の世話をするかわかる?お母さんが年を取った時にあんた達にお母さんの世話をしてほしいからなの」って。

ハハオヤってそういう交換条件で子を育ててるものなのか?違うだろう。

本当に呆れた親だよ。弟や妹はこういう親の言動は一切憶えていないだろう。憶えてたら、ハハオヤに立ち向かう私を悪者認定して寄ってたかって虐めたりしなかっただろう。

 

こういう育て方の甲斐あって、今誰一人ハハオヤに寄り付かない。